【書評】アカデミックな哲学概論のスタンダート
本書は、貫成人著「哲学マップ」(ちくま新書)で、「次のステップにすすむための本」として紹介されていた。
アカデミックな装丁に尻込みしてしまうかもしれないが、内容は非常に分かりやすい。最初の三章は哲学を外から性格づけたものであり、4から10までの七章は、基本的な概念と理論の歴史的考察である。11から14までの四章は、それぞれ特定の問題をめぐって議論の大筋を示し、最後の15は、現代の主要な哲学説を概観している。
とは言え、本書の初版は1988年3月25日であり、フーコーやドゥルーズ、デリタなどは掲載されていない。最終章で現代の主要な哲学説として触れられているのは、マルクス、ニーチェ、フロイト、フッサール、ハイデガーといった面々だ。現代哲学に多大な影響を与えている彼らのことが、駆け足でさっと通りすぎられてしまっている。お預けを食らったような物足りなさがあり、やや消化不足ではある。しかし、生の哲学以前の哲学を概観したいというなら、本書は最適な一冊となる。薄い本であるし、価格も1800円と手頃だ。また、最初の三章が、そもそも哲学とはどういうものなのかについて詳しく解説しているので、自分で哲学してみたいという方にもおすすめできる。
【目次】
1 哲学とは何か
2 哲学史の意義
3 哲学の諸部門
4 存在論の基本問題
5 主観概念
6 近世的二元論
7 認識論の系譜
8 主体性の形而上学
9 近代科学の思想史的意味
10 科学的思考の諸性格
11 生命と人間性
12 心身問題
13 自由と必然
14 真理論
15 現代の哲学的状況